構成文化財：杤木ビル | 日本遺産　関門ノスタルジック海峡

関門 “ノスタルジック” 海峡

～時の停車場、近代化の記憶～

No-22: 杤木ビル

■音声解説

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■ Commentary

　杤木ビルは、杤木商事株式会社（現杤木汽船株式会社）が大正9（1920）年に本社として建設した事務所ビルです。杤木商事は、明治34（1901）年に、杤木順作商店として若松町（現若松区）で創立。さらに、大正4（1915）年12月には、この商店が営んでいた海陸運送業、石炭販売業、代理業、請負業、鉄工造船業など一切の業務を受け継ぎ、資本金60万円で杤木商事株式会社が設立されました。
　その5年後に本社屋として新築されたのが、杤木ビルです。同社の業務が拡大するにつれ、昭和10（1935）年に本社を若松から神戸市に移転。さらに平成21（2012）年には東京都へ移転しました。現在若松にある旧本社屋は、杤木の屋号はそのままに雑居ビルとして利用されています。
　3階建の建物は建設年代からするとまだ珍しかった全鉄筋コンクリート造が特徴です。1910年代になって初めて全鉄筋コンクリート造事務所建築が建てられてからわずか数年後に取り入れていることからも、杤木商事の繁栄ぶりが伺えます。
　さらに埋立地でありながら半地下の空間を設け、建設当初から自家用浄化槽を備えたり、水洗便所が設置されたり、規模は小さいながらも最先端のビルだったことがわかります。
　外観は1階が石張り、2・3階が小口タイル張り、最上部のパラペットがモルタル塗り。装飾的な部分は、3つのひし形をアレンジした模様が道路側壁面、円形の玄関廻り、現在は見ることができませんが、最上部の小さな庇部分に付けられたライオンの彫刻に見られます。
　大正9（1920）年建設の時代背景を考慮すると、様式建築のように多くの装飾が施された当時の建築とは異なっています。むしろ現代建築に通じるシンプルな要素から構成されていることがわかります。
　設計を手掛けたのは門司港レトロ地区にある旧門司三井倶楽部の設計者で知られている建築家、松田昌平です。帝国大学卒の鉱山技師、松田武一郎を父に持ち、弟の松田軍平も建築家として大正末から昭和にかけて活躍しました。
　松田昌平は明治22（1889）年に福岡県の直方で生まれ、明治44（1911）年に名古屋高等工業の建築科を卒業。南満洲鉄道建築課、日本ゴム嘱託、福岡市嘱託を経て、事務所を開設しています。杤木ビルを手掛けた当時は、まだ20代後半の若さでした。作品からも野望あふれる若者らしい試みが感じられます。
■ Information

住所：福岡県北九州市若松区本町1-15-10
電話番号：
駐車場：あり
営業時間 :
休館日 :
料金 :
その他・お知らせ：外観のみ見学可
URL:
■Category

分類：構成文化財
ジャンル：ストーリー3
エリア：若松・戸畑エリア

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